2023薬師登山

北薬師への登りで振り返る(浄土山竜王、獅子、鷲、鳶、越中沢、スゴの頭、間山)

北薬師を抜けて現れる薬師岳特別天然記念物の圏谷群

薬師岳に登る決断をした(と言っても直前まで悩んでいた)。それというのも、富山市からは立山・剱から南に伸びる「名も無き山たち」(実際にはもちろん名前があり、そしてそれらに登山中とても苦しめられるというリスペクトを込めてこう呼ぶ)が連なり、さらにドデカい薬師岳が鎮座し、「ほんとにあれ登れるの?」という気持ちやら、「この連なりを歩ききりたい」という気持ちやらが湧き上がると同時に、登らないと一生後悔するような強迫観念に襲われるからである。

7月28日から31日までの三泊四日。準備は1週間。今回は一人であることと、久しぶりの3泊(いつもは1~2泊)だが、とくに緊張感なく、のんびり登ってやろうという気持ちで臨む。さらに道具を精選することと、食事スタイルを確立することも目的の一つ。食事の予定は以下の通り

1日目

昼 サンダーバードのサンドイッチ

夜 アルファ米(赤飯)、フリーズドライのカレー

2日目

朝 粉ミルク、シリアル、スープ、あんパン、オリーブオイル

昼 ラ王(ゆず塩)

夜 アルファ米(ピラフ)、フリーズドライビーフシチュー

3日目

朝 粉ミルク、シリアル、スープ、あんパン、オリーブオイル

昼 棒ラーメン

夜 アルファ米(わかめご飯)、フリーズドライのカレー

4日目

朝 粉ミルク、シリアル、スープ、あんパン、オリーブオイル

昼 棒ラーメン

行動食

カロリーメイト4本入り×4箱、サラミ、ドライフルーツ(バナナチップ、いちじく)、あめ(前日夜に買ったので写真に無いが、塩レモン)、Ton’s(ナッツ、スナック)、ポテトチップ(堅あげ小袋×3)、シリアルバー、(グミは重くて持って行くのやめた)

そして調理具として、ガスバーナーとガス缶、丸コッフェルを卒業し、アルコールストーブとメスティンで行く(前者は重いし丸いのが梱包しにくくて嫌いだった)。燃料はエスビットを1回4片使うとして、36片、おまけを付けて40片(20片入り2箱)を持って行く(山行後は5片余った)。燃料1箱は折りたたんだアルコールストーブの中に入ってしまうし、折りたたみのスプーンやフォーク、キッチンペーパー(18枚。トイレットペーパーは溶けるので嫌い)、ライターと一緒にメスティン(大?)に収めてしまう。とてもスッキリする。

 

最初に、この食事システムの検証結果を書く。

まず朝食は、粉ミルクとあんパン程度で出発可能。粉ミルク(赤ちゃん用)は1袋100ccだが、200ccにするのが良いだろう。食べ慣れぬシリアルは一回目の朝で飽きてしまった。またミルクとスープをどちらも楽しもうと思ったが、スープを飲む気が起きなかった(一度も飲まなかった)。そしてなんとかミニトマトを持って行きたい。たいてい潰れるので、潰れないケースにパックして持って行きたい。

行動食でも手を付ける気がおきないものがあった。チョコを塗られたシリアルバーや、ナッツ類だ。一方で、ドライフルーツやカロリーメイト、サラミは好きなのだと判明。飴も歩きながら口に放り込むのに良い。ポテトチップスも良かったが、袋が気圧低下で膨らむ点は好きではない。これらの好みが生じる理由はよく分からないが、他にもおいしくて高カロリーで足りない栄養を補えるものを発見していきたい。

そして昼食にお湯沸かす心と時間の余裕がない。ラーメンは出口が見えてきた薬師岳頂上で食べたが、アルコールで時間が掛かるのも手間。行動食で栄養補給し、テン場についたらゆっくり何か(ビール?)を食べることとする。

夕食はお湯を沸かし、アルファ米とレトルトで良い。プラフも美味しかった。モンベルの2分でできるドリアも試してみたい。フリーズドライのおかずはビーフシチューがおいしい。カレーも悪くはないが。

 

(食事・完成型)

朝:粉ミルク(200cc)、あんパン、オリーブオイル、ミニトマト(・・・500kcal)

行動食:1時間ごとにカロリーメイト1本×4回、たまにサラミ、飴、ドライフルーツ(・・・700kcal)

夜:アルファ米フリーズドライビーフシチュー(・・・600kcal)

1日1800kcalではすこし少ないな。しかし今回食べたのはこれくらいだと思われる。

水はプラティパスに2lの水入れて、ペットボトルに500mlのポカリを作って運んだ。ハイドレーションは好き。たまに飲むポカリも好き。2lの水は、ラーメン作らなければ足りる量。

 

器具類は、アルコールでは沸騰が不十分であることから、ラーメン作るのには向いていないことが判明。とくに山でラーメンを求めていないので、アルコールバーナーで作れる物を探していくこととする。キッチンペーパー18枚(1回2枚)はちょうど良い量だった。家庭用ガスコンロ用のアルミガードを適当に切って、風防として使ったのは良かった(メスティンに収納)。

枕は、そもそも枕用として考案した3cm厚のタッパ(バッテリ、ヘドラ、エマージェンシーシート、テーピング、ガムテ、葛根湯・芍薬甘草湯、絆創膏、針など)に着替えを乗せてタオルで巻くとちょうど良い。夜中に目が覚めるのは織り込み済み。8時頃に寝て、4時頃起きて準備すると良い(食事と準備には1時間半かかる)。針は今回も足親指の水ぶくれ潰しに使った。小学生時の裁縫道具の針入れなので、もうちょっと小さいのに換えたい。

 

へドラは夜間のランタンとして使うが、光源が強くて不快なのでシェードを付けたい。これまではレジ袋をかぶせてきた。今回は出発前に①プチプチ、②メッシュ入りポーチ、③シリコンポーチを試し、光が柔らかいシリコンポーチを採用。メッシュ入りポーチは財布として重宝した。

 

●1日目

6時に家を出る。サンダーバードで買い物をし、立山駅の駐車場は、駅の南を流れる川沿いに駐められた。家から持ってきたおにぎりとサラダを食べ、牛乳を飲み干し、登山靴を履いて出発。カルデラ博物館の裏を通り駅へ。

一週間ほど前に7時40分で予約したが、その後臨時7時30分が予約可能だったので、前のをキャンセルした。美女平のバスもすぐに臨時便が出る。何度も見ている滝や弥陀ヶ原をつい写真に撮ってしまう。

室堂発は9時。一ノ越経由で浄土山竜王と目指せるが、浄土山直登ルートを選ぶ。室堂山の展望台でみんながのんびり展望しているのがのどかで良い。槍まで見える。とりあえず山に登る人は、槍が見えたら「ヤリ」と口に出したくなる、の法則を発見。

左から、浄土山、鬼、獅子、五色ヶ原、雲に隠れて薬師

去年に続く浄土山の登り。意外と急な斜面もあるが、二度目なので面食らわない。オコジョが居そうな岩や穴があるが、出会うことはできず。

順調に浄土山に到達。若干急ぎすぎたのかも知れない。ここで追い抜いた人たちには、いずれ追いつかれたり、抜かれたりする。

浄土山頂から、左の立山と右の竜王

竜王は荷物を置いて5分ほどでピークに到達。ダムの向こうに△の山が見えるが、なんだろうと一緒に居た人と話す。どうも針ノ木だろう。

 

次は鬼岳。2,3日前に、60代男性が滑落し頭や背骨折る重傷とニュースがあった。その滑落場所で、滑落時に近くにいたという女性がたまたまいて、「音がして振り返ったら」というような生々しい話を聞ける。とくになんともない、砂地に10cmほどの石が転がる緩い坂道。それでも道の端に脚を置き、そこが滑ったら10mとか転がっていくんだろうな、と想像できる。鬼岳はピークへの道はなく、トラバースするのみ。

道に残る滑落痕 おそらく景色を眺めて脚を滑らせたのでは無いか?

次は獅子岳。五色ヶ原から見ると、ピークから尾根が東に延びており、獅子が伏せている姿に見えるからその名前なのだろうと思う。竜王すぎて、鬼、獅子、ザラ峠までは急登、急降で、絶対戻ってきたくないな、とその時は思ったが、翌日以降の上り下りを考えると、それほどキツくないと今は思えるが、実際にどうだか分からなくなってきた。

獅子岳を下りる頃には雨がパラつき、本降りになって慌てて雨具を着込むのがイヤなので、すぐ上下とザックカバーを付ける。まだ暑いので、ズボンはまくっておく。ちなみにそれまでは日差しが強く、ハット、サングラス、首にタオル、長袖ボタンシャツは前開放、で登る。

ザラ峠は霧の中だったが、たまに晴れて「ザラ」な感じが見えると異様な峠と分かる。立山カルデラはこの日は見えず。

 

ザラ峠から五色ヶ原に向かう頃には、雨が強くなり、雷も鳴っている。後立山か、左前方5秒ほどの距離なので、あまり怖がらずハイマツ帯を歩いていたが、後ろにいて、あとで仲良くなる女性3人グループは身をかがめてやり過ごしていたそうだ。確かに怖かったかも知れない。その後、その女性グループがスゴ乗越小屋のスタッフに「どうすべきか」聞いたところ、「運」と言われたそうで・・・。

ところでスマホ楽天)は浄土山あたりから繋がらなくなり、室堂の写真だけ家に送って、その後の写真が届かないとなると心配するだろうなと、こちらが心配になってしまう。五色ヶ原山荘では繋がるだろうと思っていたが室堂の電波に繋がらず(ドコモ、auなどは繋がる様子)、キャンプ場でも黒部の電波に繋がらず、翌日、越中沢岳あたりでようやく繋がった(実際にはあまり家族は心配していなかった。登山のリスクを知らない家族で助かった)。

五色ヶ原山荘に寄る予定ではなかったが、雨も降っていてテントも張れないので、申し込みと電波のため、そしてレインコートを乾かすためにも寄る。同じようなテント泊者が10人くらいいた。1時間くらい待って出る。この小屋には風呂もあるらしい!

テン場は小屋から15分ほど歩く。木道多くて歩きやすい。テントは40張りくらいあったか。明日薬師岳を越えたテン場まで行くという人も居てビックリする。登山の良いところは、信じられない体力の人々がいることを思い知ることができるところだと、今回の登山で思った。他に、トレイルランの人で、スゴ乗越小屋で「次の日には上高地に行きたい」という人も居てビックリ。

テントでゴロゴロしていると、左足を上げるときに膝が痛むことに気づく。この先どうなるのと、ちょっと怖くなる。明日の朝に治っていなければどうするか。元来た道を引き返すか、無理してでも薬師方面に進み3日歩き続けるのか(次の日の朝の盗み聞きで、黒部湖に下りる道もあることに気づく)、とにかく寝ることに。

●2日目

朝起きると、なんとなく膝はいけそう。テーピングだけは持ってきていたので、それを膝にX字に貼る。ズボンは半ズボンにもなるタイプだが、初めてその機能を使って、膝を剥き出しにしてテーピングする(便利!)。

五色ヶ原は鷲岳の東に広がるが、鷲岳のピークには道がない。その南の鳶山の山頂から立山カルデラが見られる。

この辺りで電波繋がる。脚、痛む。持ち上げると痛むので、左は右足のちょっと前に出す程度で、右足を大きく前に出すようにする。左足を強く地面に置いても膝は痛まない。どうも左膝内側のスジ(腱)を岩にぶつけた(1日目にそんなことがあった気がする)ようで、ヒザ軟骨の痛みで無いのが、良いような悪いような。

そこそこ大きい山体の越中沢岳からは、急降、急登しスゴの頭へ。「スゴ」って何だろうと思ったが、花崗岩が崩れた真砂(まさご)が現れたので、まさごの「さご」がスゴになったのだろうと推論する。(スゴ乗越小屋のスタッフによると、スゴとは「数合」の意で、熊猟の成果の数あわせをした場所だからだとのこと。目立つ形の山なので、それもアリかも。)

 

スゴの頭からスゴ乗越までまた下り、また登って小屋を目指す。雨も降り出し、樹林帯でもアリ、小屋は見えず、ここはキツかった。コースタイムより多く掛かった。小屋、無くなったんじゃないかと思った。なんかスゴくデカいオモトみたいなのが集団で生えてる場所があってオモロかった。

雨の中、スゴ乗越小屋のテン場に着き、きれいなスペースがあったので、リュック置いて小屋に行く。スゴ乗越で励まし合った女性3人パーティは先に着いていてビール飲んでる。僕も思わずビール(500cc、800円)買う。トイレに行きたくなるのがイヤで、あと息子と登っているといつ何があるか分からないので(運転はしないが)山でのビールを控えていたが、今日は飲む!女性パーティとも仲良くなる。

小屋で雨を待っているウチに晴れ間が出て、眼下に虹が架かっているのに気づく。そのうち小屋泊の人も出てきて、爽やかなシーンに。夕日も良かった。

スゴ乗越小屋はほんと山奥。北からも南からも一泊しないと到達せず、エスケープルートも無い。尾根の樹林帯に埋もれるようにして立つ。もう二度と来ないだろうな、とその時は思った(今もそんな気持ち)。

夕食と翌日の飲み水のための湯沸かしをし、女性パーティが隣だったので、「湿布」という言葉を盗み聞きして、脚の事情を話し、2枚もらう。助かった。これからは持ってくるようにしよう。翌日は晴れてるウチに薬師に着きたいので、6時には出るように4時頃起きるつもりで寝る。

●3日目

4時に起き、5時半に出る。濡れたフライやテントふきに使ったタオルは、ザックの外に挟んで乾かすことに。

これまでと違い、今日は上りがメイン。間(あいだ)山も余裕(ここでフライを乾かした)。そこから北薬師までの道は、広々していたり、浅い谷の底だったり、歩くと無性に幸せを感じた。その谷間の空間で足を止めると、ヒヨヒヨと鳴き声がするので目をこらすと、ライチョウの子供、そして親鳥も。後続の人に教えたり(そういうことするのは初めて)してちょっとうれしい。

メスと子(3羽?)

その後、岩を飛び渡る場所もあり、岩稜細尾根を通ったり、バリエーションが大きく楽しい。北薬師を超えると、特別天然記念物薬師岳の圏谷群が目に飛び込んでくる。見たかったんだよねー、これ。富山市から見えない東の斜面で、4つのカールがあるらしいけど、ここからは1つ(金作谷)しか見えない。赤牛岳からは4つ見えるようだ。

11時、ついに薬師頂上。富山市側はちょっと雲で見えなくなったが、裏銀座、ヤリ穂高、笠がよく見える。ラーメン食べて、1時間の休憩。

あとはひたすら下りる。薬師岳山荘、薬師平のケルン(そこから先の下りは、涸れ沢を急降するが、下りもつらいが、登りはなお辛そうだった)、薬師峠キャンプ場。

薬師峠キャンプ場は、なぜか個々のスペースが微妙に小さく、そして微妙に斜面。それでも静かそうな場所を見つけ、煮炊きする場所はほとんど無いが湯を沸かし、のんびりする。500ccを二本飲む。

●4日目

10時頃の折立のバスがあるとおもっていたら、その時刻表は今年のでは無かったみたい。キャンプ場の受付(太郎平から出張してきてビールも売ってる)でその時間のバスが確認できなかったので、この日の朝に太郎平小屋でも確認したが、無い模様。

1000mの下りということで、下りは脚がガクガクになるので山に行く前から恐怖だったが、途中で会った人が「整備されててラク」と言っていたのを心の支えにしていた。整備(木道)は途中までの緩斜面で、そこそこ急斜面の標高差500mはやはり長かった。花がよく咲いていたので、それを楽しみながら、のんびり下りる。

7時にテン場を出て、11時に着く。12時半のバスで有峰口駅へ。初めて乗る富山地鉄立山駅へ。駅レストランでソフトクリームを食べ、車に乗り安堵。

 

今後の改善点

  • タオルの枚数は要検討。汗ふき、テントふき、まくら
  • 手袋は2つ必要。行動用と、それが濡れたとき用(雨に濡れた後は指先が寒い)
  • 着替えは3泊で1回分で良かった。涼しくて狭いテント内で着替える気持ちがあまり起きない。それでも、さっぱりシートなどあると良いだろう。顔の脂取りシートもあって良かった。
  • 浄水器。2lほどのお湯を沸かすのに時間と燃料が浪費される。これが無く、ラーメンも無いなら、朝晩2片ずつ、3泊四日(6食)で12片で足りることになる。
  • 調理道具は、メスティンとアルコールで良い。メスティンを小さい方形コッフェルに換えることも考えられるが、燃料やコップ、ハシ、ライターをすべて放り込める今回のメスティンも良い。コップはシェラカップで無くて、耐熱性のある小さなプラコップ(直径7cmの)に換えたい。
  • メスティンの裏にはアルコールが燃えたタールのようなものが着くので、拭き取って、カバーに入れてザックに仕舞いたい。
  • ミニトマトを潰さず持って行け、食べたら小さく収納できる容器。
  • ザックを下ろしたときのハイドレーションの飲み口や、ハシ、フォークなど、口に入れる部分に汚れが付かないようにするカバー類がほしい。
  • ストックを、ザックを下ろさずザックに収納できる装置
  • 枕の滑り止め布?