父逝く

父が育てた草花で顔の周りを飾った


47年間にわたり、いろいろなことを僕に教え、感じさせ、心配したり叱ったりしてくれた父が、87年の生涯を閉じた。小さかったガンを放置し、飴で歯を失い、なんと体の管理を怠ったのだろうと病院で医者の話を聞いているときは感じていたが、がんの痛みに苦しんだとはいえ、介護も20日程度しか必要とせず、その間に残される者の心の準備もさせ、母に看取られ逝った、潔い死だったと今は思う。

本をよく読む父で、本を書きたいとも言っていた。日記らしきノートをつい見てしまうと、父が想像以上に自分自身のことを考え、悩み、苦しみ、辛い思いをしていたのかを知った。父は、母や子供のことを心配しているはずだと思っていたが、それよりも友を無くした悲しみや、家族に悩まされることを嘆いていた。それで返って父を客体化して見ることが出来、失ったことについて心理的には楽になった。

遺言により、葬儀は家族のみ、直葬で行った。お金も掛からず、お坊さんの手配も要らず、親戚や知人とのやりとりも要らず、家族だけで静かに送り、一緒に帰ってくることが出来たことは、家族として本当に良かったと思う。

亡くなって5日ほどで、今は「人が死ぬのは当然のこと」と思えるが、そのうちいろいろな思い出が蘇り、父の居ない実家を思い出したりして、悲しみは深くなっていく予感がする。