ザルツブルグ旅行記(前編)



泣いても笑っても、もう出発するしかない。なんといっても一番の不安は、子供たちが長旅に耐えられるかどうか。長い機内時間、10日以上の連泊。大丈夫なのか?嫁さんの不安が、ようやく僕にも理解できるようになったところで、とりあえず準備は万全。いざ出発!

  • 8/1 長崎から名古屋へ

ヨーロッパ行きの飛行機は中部国際空港から出る。だから、まずは長崎から名古屋へ移動しなくてはならない。とうぜん飛行機だ。9:55の飛行機に乗るために8時半には家を出た。空港までは、バス、タクシー、マイカーという選択肢があるが、17日間という旅行期間を考えても、マイカーで行くのがコストパフォーマンスがよい。サンスパ大村の駐車料金一泊500円で総額8500円。家から40分で乗り換え無しで到着。帰りも時間を気にする必要ない(帰りの便は19:15長崎着)。

飛行時間1時間10分は、ヨーロッパへの12時間もの飛行時間を考えれば笑えてしまうのほどの短さ。去年の5月に東京まで飛んだ時は心配したものだが、今回もそんな心配をしていたのではとうていヨーロッパへなど行けない。要は、不安というのは気の持ちようなのだ。順調に長崎空港までの道を走り、駐車場は混んでいてエレベーター近くには停められなかったけど、そのエレベーターが挙動不審で、1Fに行くつもりがなぜか屋上に出て、目の前に青空が広がっていたりして、ちょっと焦った。スーツケースの上に二人の子供を乗せて移動するという技もちょっとだけ(荷物を預けるまで)披露してみる。

中部空港に到着したのは昼食の時間だったので、予定としては空港でなにかおいしいものでも食べて、と考えていたのだが、人でごった返している。しばらくうろうろして、新しくできたというグリルでハンバーグ。子供たちは、噴水を覗いたり、お店のサングラスをはめたりして遊ぶ。どこでも遊ぶ。スーツケースは空港に預けていく。2日分で1000円。

今日は、僕が育った岩倉市の家に泊まる。今はだれも住んでいなくて、たまに親が草取りや気分転換に訪れる。今回は僕らも泊まると言うことで、一緒に行く母親だけでなく、父親も山梨から出てきてしばらく寝泊まりしている。中部空港からは名古屋鉄道名鉄)の準急で岩倉へ。空港から最寄り駅が一本の電車で行けるのは助かる。2時には家に着くと連絡していたけど、電車に乗ったのが2時前で、岩倉駅には3時頃着。タクシーで3分ほど走って実家に到着。名古屋暑い!

久しぶりの真夏の実家は、古い家のにおいがして、あまり快適とは言えない。そして、家の周りを嫁さんと子供を連れて歩いてみたけど、僕が子供のころからはずいぶん様子が変わったなぁ。平屋の家が建ってたところは、鉄骨のアパートに変わっていたりして、思い出の町並みが僕にとっての「秩序ある町」に思えるものだから、今の様子は「秩序が無くなった」ように見える。それでも、子供のころ遊んだ道ばたの「段差」や、樹皮の模様が特徴的な大きな木、よく通った道、あまり通らなかった道の入り口などは、やはりそのままの場所にあり、現実と思い出がごちゃごちゃと混在して、僕は混乱気味だったかも知れない。

名古屋の蚊は小さくて素早い。夜はベープマットを点けて寝る。翌日のこともあり、僕だけ別室で寝かしてもらう。

f:id:U_S_K:20090802095240j:image:right朝5:30起き、7:05のミューライナーとか言う電車で空港へ。チェックインに30分かかった。ネットからの予約で、その後メンバーの追加や、座席の指定を電話でなんどもしたので、混乱していたみたい。出発は10時半なので、検査場を過ぎて、出発ゲートに荷物を置いたら、キッズスペースがあるというので子供たちを遊ばせた。金髪の子と遊んだ。

f:id:U_S_K:20090802115238j:image:right搭乗直後から1,2時間寝た。バシネットは、思った以上に寝てくれた。大人の目には、あんな宙に浮いた場所で寝られるのか、と思っていたのだが。しかしその後は遊びっぱなし。機内を一緒に散歩したり、CAさんのいるゾーンに顔を出したり(CAさんには噴水のように結んだ髪型が人気)、搭乗7,8時間後(日本時間で言えば6時頃)から荒れ始める。泣きわめき、抱っこしてトイレゾーンであやしたり、トイレであやしたりしてもダメ。なんとか嫁さんが一人ずつ寝かしつける。しかし着陸用シートベルト着用とともにまた大泣き。気圧変化で耳が痛いというのもあったみたい。

フランクフルト空港に着く。現地時間では15:40だが、日本時間では夜中の12時前。空港では寝ていてくれると思ったのだが、なぜか歩き回る。ここでの持ち物チェックは厳しかった。僕はベルトも外した。嫁さんは靴に反応が出た(金具があるようには見えない靴だったが)。飲み物は、子供用の水筒に入れた分は、臭いをかいだか、軽く飲まされたかして、捨てられずに通してもらえた。

f:id:U_S_K:20090802233120j:image:rightのんびりゲートで過ごす。いつのまにかヨーロッパだ。雲が大陸っぽい。その後1時間ほどのフライトで、ザルツブルグへ。双発のプロペラ機で、やっぱ怖い。ザルツブルグ空港は雨だった(けっこう強い雨)。空港へは、姉と夫のヴォルフガングさん、そして子供の水都(みなと)君が迎えに来てくれた。僕と嫁さんは、ヴォルフガングさんの車でアパートへ。母親と姉親子はバスで家へ。

f:id:U_S_K:20090803093840j:image:rightアパートでは、ベビーカーの置き場所、鍵の開け方、窓の開け閉め、食品の場所、などを簡単に説明してもらい、とにかく眠いだろうから、詳しい説明は明日の朝、姉から、ということでヴォルフガングさんを見送り、僕らはとりあえず布団に。ダブルベッドと、その脇に一畳ほどのソファ並べてあったが、その日は4人がダブルベッドに寝た。このスタイルは、無理だと思っていたけど、その後ずっと続けられることになった。

初日は、なんとか済んだ。フライトは、やっぱり都合良くは寝てくれない。今回は3人の大人、2人の子供に4つのシート(大人3,子供用1)を取った。バシネットが付けられる壁に面した座席で足下も(まぁ)広い。そしてバシネットもアスレチックのように遊べる(体重を考えると1つに2人が乗らないように気をつけないと行けないが)。結果的にかなり大泣きしたのだが、内心はともかく、苦情や舌打ちは聞くことなく到着することができた。着陸時に耳が痛くて泣いたのなら、アメをしゃぶらせなかったのが悔やまれる(帰りはチュッパチャップスで泣かなかった)。はっきり言って、到着時はグロッキーだった。こんな旅行、まだすべきではなかった、と思った。

  • 8/3 近所の公園と買い物、サアが目尻を切る

f:id:U_S_K:20090803163435j:image:right6時半頃起きた。案の定、肩こりがひどい。すぐに湿布薬を大きなまま肩に2枚貼る。おにぎりとお味噌汁の朝ご飯。昨日はお風呂に入らずに寝たので、午前中にお風呂(泡風呂)。おにぎりやら、泡風呂用せっけんがあるのは、事前に姉がいろいろ用意しておいてくれたから。その姉に電話し、12時頃に母と一緒に来てもらうことに。子供たちと家で遊んでいたが、早朝降っていた雨はもう止んでいた。

f:id:U_S_K:20090803144241j:image:rightアパートは、ザルツブルグを流れるザルツァッハ川に面してあり、部屋は3階。1階は事務所、2階はアパートの大家さんの家、3階の3部屋が貸し出されている。部屋には姉が持ってきてくれたブロックやの手遊ぶ車のおもちゃがあるが、11時半頃になると外に出たくなって、窓から見える川の反対側にある公園に出かけることに。姉の家はその公園の向こう側にあるため、携帯(姉の携帯をかしてくれた)で電話して公園にいることを伝え、寄ってもらうことにした。

f:id:U_S_K:20090803184259j:image:right公園は、日本の普通の公園の4倍くらいの広さはある。大きな木が林立し、大部分が日陰になる。通路と遊具が並んでいる場所以外は芝生で、芝も遊具もまだ雨に濡れていたけど、日本にはない遊具がいっぱい。10種類ほどの遊具がある。姉と母と水都くんがやってきて、いっしょに遊ぶ。水都君は小学2年生(9月入学)。よく動き、よくしゃべり、よくいたずらをし、数字が好き。水都君には、旅行中ずっと子供たちが遊んでもらうことになる。日本語とドイツ語のバイリンガル(すごい!)。ときにぼくら夫婦の通訳、案内人になってくれることも。

昼ご飯はアパートでそうめん(母が日本から持ってきた)と卵焼き。二時からでかけて、駅前のショッピングセンターで日用品・食品を買うことに。とくに、アパートには陶器の食器しか無くて、子供たち用に、プラスチックのコップを買うことに。ほかに、食品はパンと米とビールと離乳食とおやつのビスケット。

買い物中に雨がひどくなったので、僕ら家族4人と母親はタクシーでアパートに帰ることに。アパートに着いたら、母親が洗濯物を持って姉の家に出かけてくれることに。そんな夕方6時頃、ベッドで飛び跳ねていたサアがバランスを崩してベッドの四隅に立っている木の部分で顔を打ち、目尻から血が・・・。のぞき込むと幸い目の中ではなくて外側が切れている様子。すわ病院か、と思い、とりあえず姉に電話してみる。「目尻を切った」ということを伝えたため(目の中に以上がある可能性は伝えてなかったため)か、ヴォルフガングさんに対処法を聞いて、カモミールを煮出してぬるい状態でガーゼにしみこませて当てておくと良いと返答される。こちらとしては軽めの病院に連れて行きたい気持ちだったけど、まぁ血もすぐに止まったし、姉たちがカモミールを持って来てくれるというので、様子を見ることに。

姉たちが来るころには元気に動き回っていたが、カモミールはなかなか塗らせてくれない。晩ご飯前に寝てしまったので、そのスキに塗る。晩ご飯は昼間に買ったソーセージを入れたスープ。母親がソーセージを切り刻んでしまい、一本のまま豪快に食べたかった僕はちょっと腐る。まぁ子供(ホー)には食べやすくなったかも。夜中にサアが何度も起きて泣いた。

  • 8/4 雨、ライドル家で過ごす

f:id:U_S_K:20090804181537j:image:right前日は母に泊まってもらった。台所のイスにマットレスを乗せて、という不安定なベッドだったけど、それで良いと言ってくれたので、がまんしてもらった。朝食は、昨日の残りのサンドイッチ。サンドイッチと言っても日本の食パンなど無いので、ゼンメルという丸いパン。もっともよく食べられているという。安くておいしい。もちもちしてる。それにチーズやハムや、卵焼きを挟んで食べた。

f:id:U_S_K:20090804174628j:image:right朝の6時台は、雨、ときに大雨という悪天候。部屋の窓から、川の水が増えたり、流れが強くなったりするのが見て分かる。外出できなくて子供たちにストレスがたまりそうだが、日本から持って来たおもちゃの財布や姉たちにもらったおもちゃなどで過ごす。

f:id:U_S_K:20090804174606j:image:right9時過ぎにシャワーを浴びる。僕が子供たちを入れた。お風呂は、トイレと洗面所と一緒になっている。当然のごとく、湯船のみで、昨日は姉の旦那さんに「日本のように湯船の外でお湯を流したりしたら、下の階まで水が漏れていく」と忠告されている。

f:id:U_S_K:20090804174526j:image:right昼食は姉夫婦の家でご馳走になる予定で、5分ほど(大人なら)の距離を歩いていく予定だったのだが、雨のため旦那さんに車で迎えに来てもらった。辛くないグリーンカレー。今回の旅行は、ヨーロッパといえども、姉のおかげで、ご飯が頻繁に食べられる。普通ならパンばかりの生活に参るところだ。なので、ザルツブルグにある日本料理屋に行かなくて済んでいる。それでも、旧市街の見つけやすい場所にある「長野」とかで、メニューのお寿司とかを見ると、つい食べたくなってしまう(きっとこの名前は、冬季オリンピックつながりではないだろうか。オーストリア冬季オリンピックが頻繁に開催される国だから。)。プルーン(乾燥してない新鮮なもの)を子供たちが気に入って、それこそ5個も10個も食べていた。食べないくせに手に持ったりしていた。僕はEggerというビールをいただいた。ザルツブルグにはSteeglというビールがあるのだが、かなりのザルツブルグ贔屓の旦那さんだけれども、そのビールは苦手という。僕は前回来た時に、喫茶店で「Steegl」というマークの入ったグラスを頼んでもらって帰った(今も家に飾ってある)ので、とても愛着があるんだけどなぁ。

f:id:U_S_K:20090804174522j:image:rightそれから、旦那さんが日本に来た時のビデオを見せてくれた。オーストリアに来て、日本のビデオを見るのも不思議なものだけど、僕が子供のころに連れて行ってもらった遊園地やそこまで行くモノレールなどの映像もあり、懐かしかった。ビデオカメラは、再生前の無理なテープの出し入れによって、鑑賞後にテープが出てこなくなったようだけど、大丈夫だったかな・・・。走り回っていたホーが、ころんでローテーブルに頬をぶつけた。その後日本に帰るまでずっと、頬がちょっとアザになっていた。

f:id:U_S_K:20090804083906j:image:right3時過ぎに辞する。雨はほぼ止んでいたので、歩いて帰る。帰ったら二人とも寝てくれた。明日は天気が良くなると言う予報なので、明日からの予定を立てた。6時には姉もアパートに来てくれて、一緒に予定を立ててもらった。昨日、今日と、あまり天気が良くなかったけど、おかげで体を休めることができた。もし晴れてたら、やっぱり歩き回りたくなって、きっと疲れていたことだろう。雨で良かったよかった。