家の仕事を子供が継ぐこと



親の仕事を継ぐことの意義について考えてみた。現代においては、親仕事を子供が継ぐことはほとんど無いと言って良い。世襲があるのは医者か政治家か、伝統芸能師ぐらいじゃないか。一般家庭の親子はほとんど別の仕事をしているだろう。世襲が出来ないような仕事だからというのもある。父親がサラリーマンの場合、それを世襲するというのは、同じ会社に入ると言うことだろうが、それは難しいだろう。会社勤めという点では同じでも、仕事内容が違えば親から子への知識の伝授などはあまりできない。せめて処世術でもつぶやく程度だろう。

こんなことを考えたのは、最近の農家の子供はほとんど農作業をしてなさそうだから。農業って、種を植えて、それが育ってゆき、自分たちの食物になることを体感できる貴重な作業だと思う。一年の流れ、季節の移り変わり、生き物の不思議、自然の摂理、いろんなものが感じられる。それなのに、農家の親は子供に農業を体験させないのか?不思議でたまらない。もったいないと思うのだ。

決して農家を非難しているわけではなく、他の職業のことも考えたら、親の仕事を子供に手伝わせないのは普通のことである。しかし、親と子で一つの作業をすることで、親の知恵を子供に伝える機会にもなり、親が年月を掛けて体得した技術や対処法、あるいは思想というものを、子供に伝える貴重なコミュニケーションの場になるはずである。

現代社会では昔に比べ、家の仕事を子供が継がなくなった。それによって失われたのは、知恵の伝達という効率性だけでなく、家庭でのコミュニケーションや、年長者の尊厳も含まれるのではないだろうか。