日本人のリーダー観



 品格やら資質という言葉が飛び交っているので、日本人は各個人にどういう理想を抱いているのかを考えてみた。とくに立場が上の人間が持つべきと資質を考えることは、日本人が抱く理想のリーダーについて考えることになり、それは日本社会の仕組みを考えることになるとも思う。

 日本の歴史を見て面白いなぁと思うのは、天皇がトップにいながらも、摂政や征夷大将軍が実際の政治を行ったり、あるいは将軍の下に執権や老中がいて将軍すらも政治を行わなくなる。身分が上がるほど形骸化し、仕事が無くなる。あるいは下にどんどん実権を移行させる力が、どの時代にも働いていると言える。不可触としながらも実権を奪い去る。飾り物としてしまう性向があるのではないか。これは「上の立場にある者は、些末な仕事をすべきでない」という意識が働いているからではないだろうか。

 だから日本人は、身分が上の人間の資質にはハッキリ言って無頓着だと思う。「上の立場にある人は、好き勝手にやっても良いが、いざというときは責任を取ってもらう」というぐらいにしか考えていないと思う。「祭り上げる」という表現が似合っているかも知れない。あまりリーダーにはなりたがらない(もちろん利権がからめば、権力争いをすることも多い)。

 日本人は、古来から稲作用の高度な潅漑設備を維持するために、強固なムラ社会をつくってきた。自分の身の回り、目が届く範囲の政治は目を光らせ、自分の仕事をきっちりこなすことを重視してきたのではないだろうか。一方で、会ったこともないし会う予定もない「遠い」リーダーには無関心で「おまかせ」状態だ。「しっかりやってくれよ」ぐらいの要望しか持って無く、「しっかり」の内容も「出来る限り」「精一杯」というような精神論である場合が多いのではないか(あるいは自分の利益を求めるか)。そんなわけで、日本人は各個人に「立場にあった仕事をする」ことを要求しているんじゃないかと考えたりする。「資質本」「品格本」は読んだことは無いのだが、「自分の分を守り、きっちりこなすこと」なんかが説かれているのではないだろうか。